最終年度である本年度は、研究総括を行いつつ、本研究の基礎史料を構成する中華人民共和国外交部档案の1960年から1965年までの期間に相当する史料が2008年秋に公開されたため、これら公文書の調査・収集活動に重点を置きつつ、研究活動を進めることとした。 成果としては、同時並行的に実施している各種研究プロジェクトの支援も受けながら計3回(2009年8月下旬、2009年10月下旬、2010年3月上旬)にわたって中華人民共和国外交部档案館において史料調査・収集を行った。もっとも、2008年の複写規定変更を受け、史料の大部分を筆写にて収集する必要があることから、人海戦術的な史料収集作業を余儀なくされているが、本プロジェクトの研究対象である「戦後日中民間人道外交」に関する関係档案はほぼ完全に収集することに成功した。 また、本年度はこれまで続けてきた「戦後日中民間人道外交」の中核的問題である中国残留日本人問題に関する研究総括をする意味で、「戦後処理と歴史認識という大きな枠組みで中国残留日本人孤児問題について論稿を発表し、本問題に関連する国家賠償請求訴訟の政治的決着が実現した今日において、改めて本問題を一次史料に基づき、歴史学・政治学的手法を通じた学術的見地から分析する必要性を訴えた。 なお、本研究課題の成果を基礎とする後継の研究課題である「建国初期中国の対日戦後処理外交-戦後日中新秩序(72年体制)構築に関する研究」(若手研究(B)・平成22年度~平成24年度)が採択内定している。
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