本年度は、サーベイすべき文献の収集と概念フレームワークの構築とを行った。本年度の研究成果は、2008年11月に日本経営教育学会関西部会において「実験会計学における研究方法のモデル構築の意義」として報告した。その概要は、以下のとおりである。本研究は、実験会計学における研究方法のモデル構築を目指している。具体的には、実験ツール・被験者の選択・被験者への報酬など、実験的研究の各方法論に対して、研究対象となる理論モデルとの適合性(目的適合性)にもとづく採択のガイドラインを構築することによって、研究方法のモデル化を実現しようとするものである。そのために、本研究では、経済学や心理学など実験的研究の成果の蓄積で先行している他の社会科学領域における方法論を綿密な文献サーベイによって体系化し、体系化された方法論を実験会計学に応用することによって、モデル化を目指す。本研究の成果によって、実験会計学という会計学における新しい研究領域の全体像と個別論点とが明確になるとともに、今後の実験会計学研究に対して「研究方法のモデル」を提供することができる。また、そのことによって、わが国の会計学研究における実験的研究の普及とその発展にも大きく貢献することが期待できるだけでなく、実験会計学における研究方法のモデル化が達成されれば、その成果を他の社会科学領域の実験的研究にもフィードバックすることができる。本研究では、実験的研究の方法論を媒介にすること(研究方法のモデル化)によって、社会科学領域における研究方法のモデルは永続的な改善が可能になると期待する。
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