研究課題
本研究の目的は、工業高校における生徒(以下、工業高校生と呼ぶ)の自己概念(Self-comcept)の形成過程を明らかにすることである。平成21年度の研究成果として、以下の内容を明らかにし、教育実践への示唆を行った。1. 工業高校生の自己概念と対人関係スキルとの関連性(学年による影響力の差異を検討)生徒の自己概念と日々の生活における対人関係において、共感的コーピングに焦点をあてて検討を行った。共感的コーピングとは、ストレス状況下での対人関係において、良好な関係を維持しようとする意識である。平成21年度で得られた知見をさらに分析し、形成された自己概念が共感的コーピングに果たす役割を、学年を追って検討した。その結果、形成された自己概念が、ストレス状況下における対人関係スキルの形成に一定の役割を果たしており、その影響力は学年によって有意に異なる傾向を示した。また学年によるこれら影響力の差異から、対人関係スキルの形成を通して、自己を主体化していくプロセスが示唆された。以上の成果は、国内の関係学会での口頭発表をもって公表している。2. 工業高校生の自己概念と好意を持つ教科との関連性生徒が好意を持つ教科を調査し、自己概念形成との関連性を明らかにすることを試みた。生徒を4群に分類((1)一般教科(国・数・英・理・社)好意群、(2)工業科目好意群、(3)一般教科・工業科目好意群、(4)好意科目無し群)し、この4群における自己概念形成の差異を検討した。その結果、工業科目好意群や一般教科・工業科目好意群が有意に高い自己概念を形成している一方、好意科目無し群は有意に低い傾向を示した。これらのことから、学校生活において好意的な科目を有することの重要性が示された。以上の成果は海外を視野に入れての検討を図るため、技術教に関する国際会議での発表をもって公表している。
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International Conference on Technology Education In the Asia Pacific Region Conference Proceedings 8巻
ページ: 292-300