研究概要 |
申請者はグラフェンを円盤状に切り出したグラフェン・ナノディスクという新しい物質群を提唱した.この中でも特に、ジグザグエッジを持つ三角グラフェン・ナノディスクにN重縮退した零エネルギー状態が存在する事を発見している.この零エネルギー状態に射影された相互作用を導出した.この系にクーロン相互作用を導入し磁性を論じた.この系では交換相互作用がクーロン相互作用に匹敵する大きさであることを発見した.ナノディスクの基底状態はスピンがN/2の磁性を示す.交換相互作用は強いので、有限系であるにも係わらず,スピンは強磁性類似の性質(擬強磁性)をもつ.この擬強磁性は1スピンと強磁性の中間の性質を持っている.この擬強磁性の熱力学的性質を調べた.温度の関数として、比熱に鋭いピークが現れ、擬強磁性相と擬常磁性相の間の擬相転移が存在する事を発見した.ナノディスクにリードをつけた系はHeisenberg-Hubbard模型で記述されることを示した.トランスファーに関してSchrieffer-Wolff変換を用いて二次摂動を行うことにより多スピン近藤ハミルトニアンを導出した.またナノディスクの零エネルギー状態に対するトランスファーエネルギーやサイトエネルギーの乱雑さの影響を調べた.その結果零エネルギー状態はこの種の摂動に対してロバストであることを発見した.格子欠陥が存在する場合について零エネルギー状態の数がどう変化するかもLiebの定理と数値計算を用いることで解析した.格子欠陥の零エネルギー状態数に与える公式を提唱した.ナノディスクスピンが擬強磁性である性質を利用したスピントロニクスデバイスを提唱した.ナノディスクスピンは小さなサイズでもスピン緩和時間は長く情報を保持し易く、尚かつ外場や電流で容易に制御できるという良い性質を持っている.スピンスイッチ、スピンダイオード、スピンフィルター、スピンバルブ、スピントランジスタなどを提案した.
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