研究概要 |
本研究では,全球雲解像モデルによって降水の日変化を再現し,それを海陸別あるいは地域ごとなどの区分で統計的に解析し,人工衛星による観測プロダクトと比較することを目的としている.全球雲解像モデルでは従来の全球気候モデルでは困難とされてきた降水の日変化が適切に再現され,大気大循環を駆動する上で重要な熱帯の対流活動が精度よく表現できるととが期待される. 20年度は,熱帯降雨観測衛星(TRMM)の降雨レーダによる降雨強度や複数チャンネルを用いた推定降水量と,全球雲解像モデルによって得られた日変化の特徴を世界で初めて示した.また,全球雲解像モデルの特徴を生かし,従来の観測データや気候モデルからでは調べる事が不可能な海洋上のコールドプールの全球分布やメソスケールの大気循環の日変化を示すことに成功した.また,海洋大陸上で見られる活発な対流活動の日変化のうち,海洋上で朝早くに発生する対流活動が同地域のコールドプールの発生パターンと非常によく対応する事が確認された.また,従来の高解像GCMやsuper parameterizationでは再現が困難とされる対流活動の遠方伝播についても,全球雲解像モデルで適切に再現されることを示した. 得られた成果は国内外の学会で発表されたほか,学術論文として20年度に執筆を行い,アメリカ気象学会が発刊するJournal of Climateへ投稿中である.同分野の匿名研究者3名による査読の結果,3名全てが本研究成果を非常に重要な結果として高く評価しており,まもなく掲載が受理される見込みである.
|