研究課題
本研究の目的は、大気中の炭素粒子(煤)の個々の形状を測定する新技術として、レーザー加熱した炭素粒子が発する熱輻射光の方位依存性、またその偏光状態を利用できることを実証することである。本年度の前半は主に文献調査により、本技術の理論的背景の整理を行った。その結果、非球形粒子の熱輻射光の方位依存性、偏光依存性は、既存のKirchhoffの法則から演繹されるものではなく、電気力学と統計力学の第一原理からRytov(1953)によって最初に推定されたものであり、のちにBekefi(1966)やTsang(1984)の研究により、その方法の一般的な定式化がなされていることがわかった(Rytov理論)。さらに文献調査によりRytov理論の実験的検証の報告が過去にないことを確かめた。本年度の後半は、Rytov理論の方位依存性、偏光依存性のうち、よりデータ解釈が単純である方位依存性の検証実験を行った。この実験では、まず形状の異なる様々な炭素粒子について、よりデータ解釈が単純である方位依存性の検証実験を行った。この実験では、まず形状の異なる様々な炭素粒子について、電子顕微鏡写真と空力学特性によりあらかじめ形状特性を求めておき、その形状特性からRytov理論により射出率の方位依存性を推定した。そして、その理論推定をレーザー加熱した各々の炭素粒子からの熱輻射光の方位依存性と比較した結果、推定値と実験値は粒子の形状の変化に対して整合的な傾向をもつという結果を得た。これは、Rytov理論の実験的検証となる初めての結果である。この内容の論文はすでに査前付国際誌(Journal of Aerosol Science)に投稿し、現在査箇中である。今年度は引き続きRytov理論の偏光依存性の部分の検証実験を行う予定である。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Journal of Geophysical Research 114
ページ: doi: 10.1029/2008JD010680
Aerosol Science and Technology 43(印刷中(掲載確定))
Journal of Geophysical Research 113
ページ: doi: 10.1029/2008JD010546