昨年度に引き続き、3次元複素Q-Fano多様体に対し、その射影モデルを記述するというアプローチにより考察をおこなった。特にFano指数が2よりも大きい場合に、重み付き射影空間への埋め込みの余次元が3よりも大きい場合について研究を進めた。この結果、特異点の情報を利用することで今まで得られていた分類の「候補達」の数を更に減らすことに成功した。また、ある種の反射影を用いて具体的な例の構成が可能だと予想されることもわかった。この構成にはまだ取り除くべき仮定が存在する。今後引き続き考察を進める予定である。共著論文作成者のBrown氏の所属大学変更に伴い、これまでKent大学Web上に存在した3次元複素Q-Fano多様体のデータベースの再構築がおこなわれた。その際、以前存在した幾つかのミスを指摘の上修正した。 8月には韓国ソウル市の西江大学に滞在中であったWarwick大学のReid氏と議論する機会を得た。また西江大学代数幾何セミナーでこれまでに得られた研究成果を発表した。さらに同月、東京大学玉原セミナーハウスにおいて代数幾何学サマースクールを共催した。ここでは、「ミラー対称性・Gromov-Witten不変量とトロピカル幾何」をテーマに研究発表のほか、論文講読を含めた勉強会をし、多数の参加者を得た。また2月に北海道大学で開催された第6回数学相互若手研究集会に参加し、ポスター発表をおこなった。発表時にはFano指数が2よりも大きい場合に、重み付き射影空間への埋め込みの余次元が4である3次元複素Q-Fano多様体の最大の候補のリストが提示されている。また、北海道大学考究録に「Fano 3-folds with higher index」という題名でテクニカルレポートも掲載された。
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