素粒子の標準理論が到達可能なエネルギースケールの物理を非常によく記述していることが明らかになった一方で、標準理論で存在が予言されるヒッグス粒子はいまだ発見されていない。さらに理論的にこの標準理論には、ヒッグス粒子は理論の基本的なスケールに比べてなぜ軽いのかを説明できない、ヒッグス粒子の"自然さ"の問題があることが指摘されている。この"自然さ"の問題を解決する標準理論を超える物理の一つとして議論されているリトルヒッグス模型に本研究では着目し、特にそれがLHC実験においてどのように解明され得るかを理解することがこの研究の目的である。リトルヒッグス模型では、標準理論のヒッグス粒子が軽いのは、ヒッグス粒子はもとは南部・ゴールドストンボソンであるため、という明白な理由があり、非常に興味深い模型といえる。リトルヒッグス模型で特徴的なのは、ヒッグス粒子の質量項に対するトップ湯川相互作用による大きな量子補正を相殺するために、トップクォークセクターを拡張する点である。そのため、模型にトップクォークのパートナーの重いトップクォークを導入する。さらに理論にT-パリティーを導入することで、電弱精密測定からの制限を緩和できることが指摘されており、そのようなT-パリティーが存在すると、この重いトップクォークのパートナーもT-パリティーが奇(T-odd)のパートナーを持つことになる。よって、このような重いトップクォークのパートナーやT-oddのトップパートナー粒子をLHC実験で実験的に発見することは、リトルヒッグス模型を検証するうえで非常に重要となる。我々は、このような重いトップクォークのパートナー粒子の、LHCでの生成を解析し、それらが発見可能であるばかりでなく、LHCでそれらの質量や生成断面積などをはかることによって理論のパラメーターを決定できる可能性を指摘した。このことから、リトルヒッグス模型を実験的に検証できる可能性があることを明らかにした。さらに、この模型が、ダークマターを説明できるかの検証も、理論のパラメーターを決定することにより、なし得ることを指摘した。
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