酸化物表面に電界誘起の擬二次元電子状態を作製し、その物性を評価することが本研究の主目的である。今年度はペロブスカイト型酸化物であるKTa03からなるトランジスタを作製し、室温から2Kまでのトランジスタ動作をはじめて観測した。表面に誘起された電子相は低温で500cm2/Vs程度の移動度を示し、酸化物からなるトランジスタとしては非常に高移動度である。この新規の擬二次元電子相の磁気抵抗を調べたところ、弱磁場の領域で顕著な正の磁気抵抗を観測した。これは、磁気抵抗の大きさや形状などから、通常負の磁気抵抗を示す弱局在現象が、スピン軌道相互作用の効果でその符号を反転したものと考えられる。さらに、この正の磁気抵抗の大きさはゲート電界で制御できることが分かった。このことはスピン軌道相互作用がゲートで制御できることを示しており、KTa03はスピンを電場で制御するスピントロニクス材料としての可能性を持つことが分かった。
|