本研究は、コヒーレントラマン散乱を用いた高圧力マイクロ放電プラズマの診断を行い、絶縁破壊機構や、発生された高圧力マイクロ放電プラズマ中のダイナミクスを明らかにし、近年盛んに研究が進められている各種マイクロプラズマ応用へのフィードバックをもたらすことを目的とする研究である。初年度である本年度は、電界計測用プローブ分子としての可能性が既に実証されている水素分子をプローブ分子として用いた測定から取り組んだ。純水素雰囲気中で発生させたグロー状ナノ秒パルス放電に対する空間、時間分解電界計測に取り組み、ナノ秒パルス放電中でのドラスチックな電界形状変化、それに伴い空間電荷分布変化をとらえることに成功した。高速カメラを用いた電極間での発光形状観察や、粒子計算結果と合わせ、高圧力ナノ秒パルス放電プラズマ中でのダイナミクスに関する多くの新たな知見を得た。また、ナノ秒パルス放電とともに有力な高圧力低温放電プラズマ発生手法である誘電体バリア放電中での電界測定も行い、誘電体バリア表面における電荷蓄積による放電空間での電界抑制をとらえることに成功した。更に、近年応用が盛んに進められている大気解放雰囲気で発生させたマイクロプラズマ中での電界計測を可能とするため、窒素分子をプローブ分子とした電界計測にも取り組み、窒素分子密度や雰囲気温度に依存しない電界計測の実現、大気解放雰囲気中におけるレーザー電界計測の実現といった結果を得た。
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