正標数の代数多様体上のベクトル束がフロベニウス写像による直像をとることで安定性が保たれるかどうかという問題と関連する問題について研究を進めた。前年度までに研究代表者は隅廣秀康氏との共同研究により、主に曲面の場合についてフロベニウス写像による直像の安定性に関する結果を得ていた。その中では標準的フィルタ付けの次数成分の安定性の解析や半安定な余接束を持つ多様体が重要な役割を果たした。まず、半安定な余接束を持つ多様体の例を増加させるべく例の計算を行った。しかし遺憾ながら未だに新しいと呼べる例は見つかっておらず今後も継続して探索していく。2008年9月には都留文科大学のワークショップにて連続講演を行い、有用な議論を行うことができた。また、2008年11月に名古屋大学で開催された正標数代数幾何に関する研究集会でこれまでの研究内容を発表し、日本人や外国人の代数幾何学者との議論することができ、標準的フィルタ付けの解析のヒントとなりうる情報を得た。さらに、2009年1月から2月にかけて米国バークレーのMathematical Sciences Research Instituteに滞在し、関連した内容の発表を行い、多くの外国人数学者、特にベクトル束の安定性に関する専門家であるAdrian Langer氏と情報交換ができたことは非常に有益であった。
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