1.F爆発列の単調増加性に関する研究 正標数の特異点と各自然数eに対し、特異点のe次F爆発が定義される。つまり、F爆発の列が得られる。この列が、どのような場合に単調増加であるかという問題を研究した。研究の結果、単調増加になるための十分条件を二つ得ることが出来た。特にF純特異点に対しては、F爆発列は単調であるという結果を得た。F純特異点はHochster-Robertsにより導入された重要な特異点のクラスで、標数零におけるログ標準特異点に対応する物であると考えられている。この結果は「F特異点」という国内外の研究者に活発に研究されている分野と、F爆発が密接に関連していることを示す最初の証拠であり、興味深い物だと言えるだろう。また、この研究の過程で、F爆発は正規性、弱正規性、F純性を保存しないことも分かった。 2.F爆発と非可換特異点解消やD加群の関係の研究 以前の研究で、アーベル群による商特異点に対して、Gヒルベルト・スキームとF爆発が一致することが分かっていた。今回、これを非アーベル群の場合に一般化することに成功した。また、Bridgeland-King-Reidの導来McKay対応と呼ばれる現象と同様のことを、F爆発に対して示すことが出来た。 これは東京大学の戸田幸伸氏との共同研究によるもので、非可換特異点解消やD加群という概念を用いることで上手くいった。この研究により、正標数の小微分作用素の環はF爆発の非可換幾何学における対応物であることが明らかになった。これはF爆発という概念は大きな広がりを持つと言うことを示す重要な結果である。
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