本研究は、太陽風中の磁気流体乱流(MHD乱流)の発展過程の解明へ向けた、太陽風アルフェン(Alfven)波のパラメトリック不安定性の新しい理論の構築を目的としている。今年度は、太陽風中におけるパラメトリック不安定性とプロトンビーム成分との関連性・独立性を精査するため、新しい理論モデルの構築・解析、基礎的な数値シミュレーション(数値計算)による解析を行った。まず、これまでの理論研究を発展させる形で、イオン運動論効果に加えて多種イオンの効果を含む理論モデルの導出・解析を行った。並行して、実際に観測されているアルフェン乱流のスペクトルを模擬した初期条件下における数値計算を行い、バイ・コヒーレンスなどの手法による非線形性の評価から、これまでの理論研究と観測研究の矛盾の一部を修正したアルフェン乱流の発展過程モデルを構築した。次に、イオン運動論・多種イオンの効果を含む数値計算を行い、太陽風アルフェン波の非線形発展が線形的に安定なプロトンビームにも大きく影響を受けること、プロトンビームの一部が大振幅アルフェン波との相互作用によってアルフェン速度の10倍程度にまで加速されることを示した。加えて、Vlasov-Hall-MHDコードを用いて、Alfven波の非線形発展に伴うプロトンビーム生成の詳細な物理過程について議論を行った。次年度は以上の結果を踏まえて、散逸領域の波動(運動論アルフェン波)とアルフェン乱流との相互作用、温度異方性の生成過程についての議論を行う予定である。
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