研究概要 |
本研究は,実験室で固着滑り(スティック-スリップ),すなわち模擬地震サイクルを発生させ,その現象に対してデータ同化の手法を適用することで,ある時点までで得られたデータを用いて将来の滑り,すなわち模擬地震の発生予測を行うことを目的としている.本年度は,研究開始初年度として,実験装置の立ち上げ準備,ならびにデータ同化に使用する力学モデルの挙動を計算するためのシミュレーションコードの開発を行った.実験装置の立ち上げに関しては,既存の載荷装置に目立った障害のないことが確認でき,測定機器を準備している段階である.測定装置の項目に,当初予定していた,滑り面近傍に設置する歪み計,および滑り面をはさんで設置する変位計に加えて,光学的に試料の挙動を撮影できる高速度カメラを設定し,準備を進めている.光学撮影のために,光透過性のあるアクリル試料を用意するとともに,微粒子を封入した高速回転剪断実験装置を用いて撮影試験を行った.高速カメラの導入により,歪み計,変位計では捉えることが容易でない,破壊や波動が伝播する様子そのものを時空間で連続的に捉えられるものと期待される.シミュレーションコードに関しては,境界積分方程式法を用いて,準静的過程と動的過程を統合したフレームワークにおいて,ゆっくりとした応力の蓄積過程と急激な地震時滑りという,閉じた地震サイクルを表現できるところまで開発が進んだ.この計算コードは,研究効率を高めるために所属機関における業務である,2008年岩手・宮城内陸地震の研究のために開発しているものと共通化を図った物である.コードは,単純な摩擦構成則を扱えるようになっている.
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