CO_2やCH_4は大気中の主要な温室効果ガスであることから、それらの濃度変動は地球史を通じた表層環境変動に大きな影響を与えてきたと考えられている。しかし、これまでの理論計算や地質記録に基づく推定は未だ定性的なものでしかない。そこで申請者は、発泡溶岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物を用いて地球史を通じた海水中のCO_2、CH_4濃度変動を定量的に明らかにすることを目的とした研究を行っている。このためには、熱水性石英中の流体包有物から海水組成を復元する手法を確立する必要がある。したがって、本研究では、同一試料中の流体包有物のCO_2、CH_4濃度及び炭素同位体比測定法を確立すること、この手法を第三紀から第四紀の試料に適用し現世の海水組成を復元することで本手法の有用性を確認することを目的としている。そこで本年度は、秋に東京都小笠原村、冬にはアメリカ合衆国グアム島にて地質調査を行った。その結果、両地域において比較的保存の良い熱水性石英を産する露頭を発見することができた。露頭にて石英の産状及びそれを囲む火山岩を記載した結果、石英は発泡した溶岩の空隙を埋め、空隙の縁から中心に向かって成長しており、火山岩は石英、沸石、粘土鉱物を変質鉱物として含んでいることが明らかになった。このことから石英周囲の岩石を変質させた熱水の温度は約200度以下であると考えられる。このような石英の産状は太古代や原生代の地質体に産する熱水性石英と非常に良く似ている。以上の結果から、本年度の地質調査により、本研究目的に適した試料を採取することができたと考えられる。次年度は、この試料を用いて分析手法の確立を目指す。
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