本研究は、熱、光および電場などの外部刺激がもたらす分子構造変化の仕事量を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて定量的に評価し、人工筋肉のコンポーネントやMEMSにおけるアクチュエータの性能を決定する方法、『単一分子の仕事量測定法』を確立することを目的としている。昨年度は当初の計画通り、1. 測定系の立ち上げおよび2. 測定対象の固体表面への固定を試みた。 1. 測定系の立ち上げ : 昨年度予算より計画通り購入したオシロスコープと、別予算より購入した微弱電流測定装置を、当研究室所有の原子間力顕微鏡に信号入出力デバイスを介して取り付けた。探針-試料間の距離をピエゾドライバで制御し、探針-試料間の力測定と伝導度測定を同時に行い、それらの情報をオシロスコープにより同時に記録するシステムを完成させた。探針-分子-基板接合形成に伴う、伝導度変化より捕捉を確認する。測定対象の動きに伴う探針の変位より、速度・力など運動量の一分子計測を行うことができる。 2. 測定対象の固体表面への固定 : 申請書においては、アゾベンゼンの光異性化にフォーカスしているが、現在は、近年、ナノマシンとして脚光を浴びる生体分子モーターのトルク測定を対象としている。固体基板上に生体分子モーターを適度に分散させ、単一分子レベルでAFM観察することに成功した。また、固体基板のフィラメントによる修飾もすでに実現されている。 今後は、AFM探針をアビジンコートし、ビオチンで修飾された生体分子モーターを捕捉し、フィラメント上を走る分子モーターの運動量を測定する。
|