糖鎖機能をより積極的に解明・利用していくにあたっては、界面への高密度な糖鎖高分子の集積化が求められる。高分子微粒子は取り扱いが容易で、大きな表面積(=界面)を有するにも関らず、その表面上への糖鎖高分子の集積化はあまり検討されてこなかった。本研究では、高分子微粒子表面上で、水中での原子移動ラジカル重合法(水中ATRP法)により糖鎖高分子を調製する「糖鎖高分子被覆微粒子」の簡便な調製法の開発を目的とし実験を行った。 H20年度研究においては、水中ATRP法に適応可能なスルホンアミド基含有のスチレン型糖鎖モノマーのライブラリーを新たに調製し、まず水中での会合挙動について検討した。その結果、合成した糖鎖モノマーは水中でミセル形成能を有することが確かめられた。また、実際に水中でのATRPにより重合挙動を検討した結果、リビング的に重合が進行することが分かった。 表面を高分子微粒子で被覆するために、微粒子表面にリビング重合開始基を導入し、マクロモノマー型高分子微粒子を作製した。作製した微粒子表面から水中でATRP法により重合を行い、DLS、NMR、IR、SEMにより測定を行った結果、微粒子表面に数十nm程度の糖鎖高分子の膜が形成されていることが示された。またヘテロ凝集法により作製した異型粒子表面からの糖鎖高分子層の形成も可能であることが明らかとなった。
|