研究概要 |
ホール移動度の向上とPCBMに対する相溶性を期待し、コイル鎖にポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(PVTPA)を新たに採用した。VTPAのアニオン重合を詳細に検討した結果、sec-ブチルリチウムを開始剤として用い、tert-ブチルベンゼン中、室温でリビング的に重合が進行することを見出した。この結果を踏まえ、昨年度に本研究課題で開発した鎖末端に1,1-ジフェニルエチレン(DPE)を有する完全頭尾結合型ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)と、リビングPVTPAの定量的な付加反応により、新規ブロック共重合体の合成に初めて成功した。目的の構造はNMR、GPC-RALLS、UV-visスペクトル、TGAを用いて確認した。さらにDSC及びAFM測定より、得られたブロック共重合体フィルムは12-15nmのドメイン幅でナノファイバー状のミクロ相分離形態を取ることが明らかとなった。また、アニール条件を詳細に検討した結果、トルエン蒸気を用いた溶媒アニールを施した場合に最も規則正しく配向した平均12nm幅のラメラ構造を示すことが分かった。P3HT(p型半導体)とフラーレン誘導体[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM,n型半導体)のブレンドにおいて、得られたブロック共重合体を界面活性剤として用いると、光電変換効率が最大4.37%となり、ブロック共重合体を加えない系(3.69%)よりも18%程度大きく向上した。得られた結果は次世代太陽光エネルギー開発のための重要な布石となることが期待される。
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