研究概要 |
本研究は、「有機電解合成」と「高分子反応」の融合により、「高分子電解反応」という新規分野の開拓を目的としており、前年度にポリフルオレン誘導体の電解フッ素化反応に初めて成功し、高分子電解反応の概念を確立するに至った。今年度はさらなる事例を検討し、汎用性を示すとともに発展を期した。 具体的には、ポリ(フルオレン-カルバゾール)やポリ(フルオレン-チオフェン)などの交互共重合体を用いて、脱硫フッ素化や電解ハロゲン化などを行った。ポリフルオレン誘導体の電解フッ素化の時と同様、通電量を変えることで反応率の制御に成功した。また高分子の酸化電位と電解電位の関係性に焦点を当て、反応機構を解明した。その結果、まず高分子が酸化された後に系中の求核試薬との後続反応がおこることが明らかとなった。さらに高分子の分子変換前後で光学特性(紫外可視吸収スペクトルや発光スペクトル)や電気化学特性(HOMO,LUMOレベルやバンドギャップ)が大きく変化し、反応率制御により所望の特性を付与できることが示された。これら結果から本手法の有機デバイスへの応用が期待される。 本研究を通じて、高分子電解反応は電極上の薄膜の固相反応でありながら、選択的かつ定量的に分子変換が行えるという、従来にはない新しい手法であることが明らかとなった。当該研究期間で反応機構や汎用性を確立することに成功したが、今後も本手法は高分子化学・電気化学・材料化学分野で発展を遂げていくと確信している。
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