多成分反応は3種類以上の出発物質を用いる合成反応であり、出発物質のうちの大部分が生成物に取り込まれ、副生成物が少ないだけでなく、ワンポットで標的化合物を得られることからアトムエコノミーに優れた魅力的な反応である。また多成分反応は、構造多様性を有するドラッグライクな小分子を合成できることから、コンビナトリアルケミストリー、あるいは創薬化学の分野において重要な役割を果たしている。特に含窒素化合物合成には非常に有効で、Ugi反応やHantzsch反応等の多様な系によって、簡便かつ高収率で幅広い生物活性を示す小分子を得ることが可能である。本研究は、これまで世界で例のない多成分系(Ugi反応)における触媒的不斉反応の開発と、それらの反応における不斉誘導の本質を系統的に解明することを主目的として研究を開始し、以下の結果を得た。 1) アルデヒド、アミン、カルボン酸、そしてイソシアニドを成分として行うUgi反応の触媒的不斉化を試みた。不斉源としてBOXタイプのリガンドと、Lewis酸触媒を用いたが良好な不斉収率は得られなかった。また、本反応はカルボン酸非存在下では進行せず、反応を生成系に進行させるためにはイソシアニドが付加した中間体をカルボン酸やアルコール等、他の求核種で捕捉する必要があることがわかった。 2) 分子内にアルコール部位を有するイソシアニドとアルデヒドとの触媒的不斉Passerini型反応の検討を行ったところ、キラルなLewis酸存在下、対応するジヒドロオキサゾール誘導体が得られたが、不斉収率は低いものであった。
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