研究課題
申請者が本年度行ってきたテーマは主に二つに大別でき、(I)キラルポリマーを用いるキロプティカルセンサーの構築ならびに(II)セルロースをキラル足場とする不斉光化学反応を行っている。(I)に関しては、キラル認識ならびにキラル出力部位としてビナフトール誘導体を修飾したポリチオフェンの合成に成功している。得られたポリマーのキロプティカル特性を吸収、円二色性ならびに蛍光スペクトルにより詳細に検討した。また、各種アミノ酸誘導体の滴定実験を行い各々の錯形成定数を算出したところ、エナンチオ選択性(KD/KL)はフェニルアラニンで1.3、アラニンでは2.4であった。さらに対応するモノマーユニットに対して約40倍もの錯形成定数であったことから、非常に少量の検体でも検知可能であることが明らかとなった。これらを踏まえて次年度は、本ポリマー/単層カーボンナノチューブフィルムを作成し、種々の気化性キラル化合物の蒸気に曝し、電流応答値を読むことでセンサーとしての性能評価を行う予定である。(II)に関しては、キラルな高分子主鎖を持つ2,3-O-ジメチルセルロースをキラルな足場とする2-アントラセンカルボン酸の光不斉二量化反応を行っている。光不斉反応をジクロロメタン溶液中で行ったところ、anti-head to head体で22%eeと良好な光学収率を達成するとともに、転化率に対して生成体比率ならびにeeが直線的に変化することから、基底状態のコンフォメーションが励起状態反応に影響を及ぼしていることも明らかにした。現在、溶媒ならびに圧力条件等を変化させながら、ポリメリックなキラル足場が分子レベルからマクロな範囲にわたり、光反応基質に及ぼす因子をさらに詳細に検討しているところである。
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Photochemical & Photobiological Sciences 7
ページ: 1493-1500
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~inoken/doc/013109_Gaku_CV_official.pdf