研究概要 |
本研究は、人体への影響が指摘されているのにもかかわらず、わが国では存在量が明らかとなっていない環境中過塩素酸イオンについて調査するものである。エアロゾル捕集器及びポストカラム濃縮器を開発し、それらを用いて大気エアロゾル中で微量に存在するであろう過塩素酸イオンの自動測定システムを構築する。この自動測定システムを用いて、わが国における過塩素酸イオンの拡散状況を明らかにしていくことが本研究の目的である。本年度は、過塩素酸イオンをオンライン濃縮するために、ポストカラム濃縮器の開発を試みた。濃縮器は、主に中空ナフィオン膜とガラス管またはテフロンチューブで構成される。試料が中空ナフィオン膜内を流れる間、溶媒は、水蒸気として膜壁を透過し、中空ナフィオン膜の外側を流れる不活性ガスにより除去される。一方、過塩素酸イオンを含む陰イオンは、膜壁を透過せずに中空ナフィオン膜内で濃縮される。まず始めに、中空ナフィオン膜の長さが10cmの濃縮器で濃縮率の測定を行った。過塩素酸イオンの濃縮率は、試料の中空ナフィオン膜内滞留時間及び溶媒を除去する不活性ガス流最の増加により上昇した。また、濃縮器温度の上昇やN,N-ジメチルホルムアミド・メタノール混合溶液による中空ナフィオン膜の煮沸処理が濃縮率の上昇に有効であることが明らかとなった。次に、中空ナフィオン膜の長さが100cmの濃縮器をイオンクロマトグラフの検出器の前に接続し、過塩素酸イオンのポストカラム濃縮を試みた。10cmの濃縮器に比べて高い濃縮率を得ることができたが、連続濃縮を長時間続けると、ナフィオン膜の外壁に水滴が観測され濃縮率が低下した。これは、ナフィオン膜を透過した水蒸気の除去が不十分であったためと思われる。今後、濃縮器の形状を改善し、濃縮率の安定性を高めてゆく予定である。
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