本研究は、人体への影響が指摘されているのにもかかわらず、わが国では存在量が明らかとなっていない環境中過塩素酸イオンについて調査するものである。エアロゾル捕集器及びポストカラム濃縮器を開発し、それらを用いて大気エアロゾル中で微量に存在すると思われる過塩素酸イオンの自動測定システムを構築する。この自動測定システムを用いて、わが国における過塩素酸イオンの拡散状況を明らかにしていくことが本研究の目的である。本年度は、昨年度に試作したポストカラム濃縮器の改良と大気エアロゾル中過塩素酸イオンの測定を行った。ポストカラム濃縮器の改良では、濃縮器の形状をメイズ型にすることにより、以前の濃縮器で問題となっていた水滴の生成による濃縮率の低下を抑制することに成功した。このポストカラム濃縮器と市販のプレカラム濃縮器を併用することにより、分析時における過塩素酸イオンを損失せずに濃縮率を上昇させることができた。次に、疎水性膜を用いたエアロゾル連続捕集器とポストカラム濃縮器をイオンクロマトグラフに組み入れた自動測定システムを構築することにより、時間分解能を数時間して、エアロゾル中の過塩素酸イオンを連続的に分析することが可能となった。また、ニールインパクターを用いて、大気エアロゾル中の粗大粒子(PM10-2.5)と微小粒子(PM2.5)を分級捕集し、それぞれのフィルターに捕集された過塩素酸イオンを定量した。大気中の過塩素酸イオンは10ng/m3程度で存在していることが明らかとなり、いずれのエアロゾル試料においても、過塩素酸イオンはPM2.5中に多く存在していたことから、過塩素酸イオンの発生源は人為的なものであることが示唆された。
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