本研究では通常の化学液相法での合成が困難な易酸化性元素の非酸化物や高融点材料ナノ粒子合成のための新規液相プロセスの一つとして、「液相レーザーアブレーション法」に着目した。平成20年度は有機溶媒中に分散させたホウ素粒子をレーザー照射することによって得られる炭化ホウ素粒子に着目し、用いる溶媒の種類と照射条件によって得られる炭化ホウ素粒子の生成率や粒子サイズを調査した。平成21年度は炭化ケイ素ナノ粒子を有機溶媒中に分散させ、同様にレーザー照射を行ったところ、比較的弱い照射強度では照射後の炭化ケイ素粒子はサブミクロンの球状粒子に変化しており、溶融プロセスが起こっていることが考えられる。生成した球状粒子の表面には、炭化ホウ素粒子の場合と同様に厚さが約10nmのグラファイト皮膜が生成していることも明らかとなった。レーザー照射強度を増加すると、ホウ素の場合と同様に酸化物(酸化ケイ素)の生成が顕著になる傾向が確認され、アブレーションが起こっていると考えられる。しかし、一方でシリコン結晶の生成もが確認されるようになり、アブレーションの条件では複数の異なる反応が起こっていると考えられる。これはレーザー照射に集光レンズを用いており、分散液面付近に焦点を合わせていたために、液面付近と液面から距離が離れた液相の空間でのレーザー光フルエンスに分布があったことから異なる反応が同時に起こったと考えられる。この様に、従来は本手法において一般的であった集光照射法では反応が複雑であり、現象の解明のためには非集光照射が適していると考えられる。
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