当初計画したα,β-不飽和カルボン酸を基質として用いた触媒的不斉反応の開発につい種々検討したが、主にカルボン酸の酸性に起因する触媒の分解により、有用な反応を開発することはできなかった。しかし、酸に対して耐久性の高い触媒の検討を行う過程で、天然アミノ酸の一つであるプロリンより合成できる新規配位子を見出し、これを有するチタン錯体が過酸化水素水を酸化剤として用いたオレフィンの不斉エポキシ化の優れた触媒となることを見出した。特にスチレン類の不斉エポキシ化においては、96~98%eeという従来法を凌ぐ非常に高いエナンチオ選択性が得られた。
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