研究概要 |
レーザー光による光トラッピング法は,細胞生物学や微小メカニクスの分野において必須技術となっている.しかしながら,高い屈折率を有する半導体や不透明な金属・磁性体といった材料からなる多くの微粒子は,従来法による3次元的捕捉は困難とされている.この課題解決のため,本研究では高次径偏光ビームが有する光ケージ特性に着目し,新しい光トラッピング手法の開発を目的とする.本年度は,昨年度に成功した高次径偏光ビームの発生手法に関してより詳細な検討を行い,様々な次数の高次径偏光モードを単一横モードで直接レーザー発振させる事に成功した.本結果は,光トラッピングを始めとした高次径偏光ビームによる様々な応用が可能になるだけでなく,これまで理論的にのみ報告されていた高次径偏光モードの実証という観点から,学術的にも重要な結果と言える.また,非線形光学効果の一つである第2高調波発生を用いて,径偏光ビームの集光により焦点付近に生ずる軸方向電場発生の実験的な検証を行った.ZnSe結晶の(100)面に対して垂直に波長1064nmの径偏光ビームをNA0.5のレンズにより集光した場合,その焦点が結晶表面に有る場合に,ドーナツ状に類似した強度分布を有する第2高調波の発生を確認した.一方で径偏光に直交した偏光分布を有する方位偏光ビームの場合,発生した第2高調波が極めて弱く4つのスポット状となる事が分かった.この発生した第2高調波の強度分布は,ZnSe結晶において誘起される非線形分極に関して,径偏光ビーム集光による軸方向電場の寄与を考慮することでよく説明できる事を明らかにした.
|