研究概要 |
本研究は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)技術を利用したマルチプローブ記録システムの研究である。本研究は、導電性高分子の導電性変化を記録情報としたマルチプローブ超高密度記録システムの実現を目的とし、ナノ・分子レベルで構造を制御された導電性高分子記録媒体の研究を行う。 本年度は、導電性高分子であるポリアニリンを用いたパターンドメディアの作製、および高密度記録の実証実験を行った。記録媒体をパターンドメディア化することによって、記録ビットの不要な広がりを防ぐことができる。また、高分子鎖をナノサイズの空間に閉じ込めることで、高分子鎖の乱雑な凝集を抑制することができる。本研究では、ブロック共重合体リソグラフィを利用することで, 極めて狭ピッチのポリアニリンドットパターンを形成することに成功した。そして、作製したパターンドメディアに対してSPMを用いて電気的修飾実験を行った。その結果、印加電圧を変調してポリアニリンドットの導電性を可逆的に変調させることに成功した。また、本研究の記録原理におけるピッチ30nmの記録を達成した。これは、1ドットを1ビットと換算した場合、700Gbits/inch^2以上という極めて高い記録密度に相当する。 さらに、記録媒体の下地金属基板の平坦化技術の研究も行った。下地金属基板の平坦性は、記録ビットサイズがナノメートルスケールとなる超高密度記録を実現ずる上で、極めて重要な要素の一つと考えられる。本研究では、原子レベルで平坦なマイカへき開面の平坦性を金薄膜に転写することによって、数平方マイクロメートルの面積においてオングストロームレベルの平坦性を持つ金表面の形成に成功した。そして、作製した金平坦面にポリアニリン薄膜を成膜し、SPMによる可逆的記録書き込みを行うことに成功した。
|