研究概要 |
触媒の劣化現象を扱うシミュレーションは温度や時間を問題なく考慮できることが大前提である.しかし従来の計算手法は,時間という概念が無い静的モンテカルロ法,温度は考慮できるが耐久を解析できるほど長時間の計算ができない分子動力学法、通常0Kでの計算の上,数原子しか計算できない第一原理計算手法など,現実からの乖離が大きい.その為,貴金属/担体両方の経時劣化特性を同時に評価できる,キネティックモンテカルロ法に基づく触媒表面上貴金属の構造劣化特性シミュレータを開発する事に成功した. 担体の粒成長:γ-Al_2O_3,CeO_2,ZrO_2担体を初期BET比表面積が各々185m^2/g,107m^2/g,88m^2/gを有するよう0.1μm×0.2μm×0.2μmに構築し,各担体上に2wt%の白金を担持するモデリングに成功した.構築構造の3次元シンタリングシミュレーションを行った.シミュレーションと同一条件である1073K,5時間のγ-Al_2O_3,CeO_2,ZrO_2担体の比表面積の経時変化を耐久試験結果と比較したところ,担体の比表面積はγ-Al_2O_3は15%減少,CeO_2は25%減少,ZrO_2は65%減少する序列で観測され,シミュレーション結果は,定量的に実験結果と一致することがわかった。 Pt貴金属粒子のシンタリング特性:3種類の異なる担体上に担持されたPtの粒径分布の経時変化を算出することに成功した.γ-Al_2O_3上では初期の1.0mnから24nmまで肥大化し,ZrO_2上では15nm近傍まで肥大化した.CeO_2担体上では粒径分布は初期と比較してほぼ不変であった.同温度,同操作時間の耐久実験では白金粒径が,γ-Al_2O_3上>ZrO_2上>CeO_2上の順にシンタリングが抑制されており,本手法が担持貴金属のシンタリングの程度も定量的に再現できる事がわかった.(775字)
|