巨大磁気モーメントを有する窒化鉄(Fe_<16>N_2)を主相としたナノマグネットの創製を最終目的として、液相あるいは気相より窒化鉄粒子を直接的に合成する直接合成方式、および、原材料となる前駆粒子を作製後、固相-気相反応によって粒子を窒化する間接合成方式により窒化鉄ナノマグネットの合成技術の検討を行った。 直接合成方式では、前駆体である鉄カルボニルをアンモニアガス存在下で熱分解させるプロセスを検討した。分解温度・時間およびアンモニアガス供給方法などのプロセスパラメータを系統的に変化させ、電子顕微鏡を用いた構造評価ならびに磁気特性評価を詳細に検討した結果、平均粒径約10nmのFe_3N相からなるナノ粒子、および部分的ではあるがFe_4N相からなるナノ粒子を生成させることに成功した。またFeおよびNを含む有機金属錯体を前駆体とし、これを熱分解することによる直接合成方法も試み、生成した超微粒子の評価手法の検討を現在行っている。 一方、間接合成方式では、種々の粒径および粒子形態を有する酸化鉄(Fe_2O_3)粒子を原料粒子として用い、水素ガスで還元を行った後、引き続きアンモニアガスに曝し反応温度と反応時間を系統的に変化させ窒化過程を検討した。その結果、Fe_<16>N_2相が生成する条件を見出すことができた。現在はFe_<16>N_2相の生成率の向上ならび飽和磁化、磁気異方性等の磁気特性評価に注力している。 いずれの方式においても、単相化方法の確立が課題となっており、今後はこの解決に重点的に取り組んでいく予定である。
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