研究概要 |
本研究では, 高温加圧加工法による共有結合性単結晶の三次元高温塑性変形機構を材料学的・応力解析的見地から解明し, さまざまな可能性を秘めた革新的X線集光・分光ミラーへの応用を試みることを目的として以下の成果を得た. 変形の各種パラメータ依存性 変形の温度・負荷荷重・歪速度依存性を詳細に調べることから研究に着手した. 融点近傍から融点-300℃まで加工温度をふり, 負荷荷重, 歪速度を変えて高温加圧加工を行った. その結果, 融点近傍では低荷重でも加工が完了するのに対し, 低温では荷重を増やさなければ変形そのものが完了しない, クリープ変形量も極めて小さいことがわかった. また, 低温変形では変形そのものが目的形状に達しても, 結晶内部の格子面に乱れが生じていることがX線回折実験から明らかとなっており, 塑性変形過程に導入される転位が結晶性を乱していることが示唆された. 一方で, 加工速度を遅くすることで, 結晶性の乱れがわずかに改善されることも明らかとなった. 以上のことから, 低温では転位の成長速度と結晶の変形速度との間に不整合が生じたと考えられる, 融点近傍の高温変形ではカーボン製金型の表面粗さ等を反映した結晶表面の面粗さの乱れが観察された. これは応用を考えた場合に, 格子面の不均一変形による集光度の低下を引き起こすことが考えられるため, これの抑制に研究期間の後半を費やした. 結果として, ウエハのセッティングプロセス, 高温加圧加工プロセスを改良することにより, 表面粗さを改善することに成功した. 表面の不均一変形は変形にともなう転位生成の優先サイトとなりうる為, これが抑制されなければ観察すべき転位分布の再現性が損なわれてしまう. 本結果により, 次年度以降の転位分布観察, 変形過程の把握および変形メカニズム解明に道が拓けた.
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