低消費電力・超高速の光情報処理の為、近接場光で動作するナノ寸法光デバイスを提案している。なお、これらのデバイス間での光信号授受にはナノ寸法ビーム幅を有する光伝送路が必要であるが、従来の光ファイバ・光導波路では光の回折限界の為にこの要求を満たさない。本研究の目的はこれを解決することである。提案するナノ寸法光伝送路は寸法と位置の制御された半導体の量子ドット(QD)列によって構成され、近接場光を信号担体として使い、回折限界を超えるナノ寸法ビーム幅を初めて可能とする。 超長スパン化の為にQD内の光学禁制準位の間での近接場光エネルギー移動を用いる方法を考案した。従来の光電子相互作用では光学許容準位を利用するのみであり、許容準位からの光放射寿命が短い為に伝送スパンは数100nm程度である。しかし近接場光相互作用の場合、近接場光の空開局在性により光学禁制準位が使え、その光放射寿命が非常に長いので伝送スパンが従来の1万倍向上することを世界で初めて見い出し、数値計算によりmm程度の伝送距離を検証した。さらに、相互作用に引き続く緩和現象により伝送路出力端でのインピーダンス整合が実現する可能性を見い出し、数値計算によりそれを確認した。 ナノ寸法ビーム幅を得る為に室温で良好な発光特性を有するZnOのQDをゾルゲル法により作製した。光電子工学で従来使われているトップダウン的作成技術ではQDを直線配列することは不可能なので、DNAに沿ってQDを固定する方法を開発した。その結果QD(直径5nm)をDNA全長(16.4μm)にわたり等間隔(1.2nm程度)で配列することに世界で初めて成功し、それを透過電子顕微鏡で確認した。さらにこの列の偏光特性を測定し、QD列に沿う光伝送を確認した。
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