研究概要 |
本申請研究の目的は,原手間力顕微鏡(AFM)を利用したエバネッセントTHz光散乱検出法を確立することにある.すなわち,超高分解能を付加可能である近接場技術を超高感度THz顕微鏡に導入して,passiveかつサブマイクロメートルオーダでのイメージング技術を確立し,物質現象のダイナミクスを実時間スケールで計測することを目的としている. 平成20年度は近接場光学系を導入したTHzナノ顕微鏡の構築が目標であった.目標達成へ向けて,(i)金属プローブの作製(ii)プローブ発振機構の確立(iii)サンプル-プローブ間の位置決め制御法の確立を行い,自己検知型AFMを開発した.プローブの作製に関しては,径50ミクロンのタンスステンワイヤを陰極,炭素棒を陽極として水酸化カリウム水溶液中で電解研磨することによって,先端径500 nm以下のプローブ作製に成功した.プローブ発振に関しては,プローブを接着した水晶振動子の固有振動数(32KHz程度)を持つ交流電圧をファンクションジェネレータによって付加して発振を行った.位置決め制御に関しては,プローブをサンプルにアプローチしつつ,水晶振動子に流れる電流をロックインアンプにてモニタし,シアフォース(原子間力)による電流(プローブの振動振幅に対応)減衰を評価することにより行った.評価実験の結果,サンプル-プローブ間の位置決め精度は10 nm以下を達成し,近接場検出に向けて十分な精度が得られた.以上のように自己検知型AFMが完成したため,並行して構築していたテラヘルツ顕微鏡に本AFMを導入し,THzナノ顕微鏡を完成させた.
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