研究概要 |
本申請研究の目的は,原子間力顕微鏡(AFM)を利用し,照射光源を利用しないエバネッセントTHz光散乱検出法を確立することにある.すなわち,超高分解能を付加可能である近接場技術を超高感度THz顕微鏡に導入して,passiveかつサブマイクロメートルオーダでのイメージング技術を確立し,物質現象のダイナミクスを実時間スケールで計測することを目的としている. 前年度は自己検知型AFMを開発し,THzナノ顕微鏡を構築した.本年度は構築顕微鏡を利用して,目的であるTHz自然放出光の近接場イメージングを目指した.探針からの散乱光にはFar-field成分とNear-field成分が含まれるが,所望のNear-fild成分のみを抽出するため,計測中に金属探針をピエゾで上下に変調させ,ロックイン検出を行うこととした.探針を上下に変調させつつ,常温のサンプル(GaAs基板にAuを100nm蒸着したもの)を走査した結果,ロックイン復調により近接場応答が得られた.Auは放射率が小さいため,Far-fildではTHz信号がGaAsに比べて遥かに小さい.しかしながら,passiveな近接場計測において,Au上ではGaAs上よりも遥かに大きい応答が得られた.本結果は,金属上で室温熱励起された表面プラズモンが検出されたことを意味する.顕微鏡のスペックとしては,走査ステップ25nm,走査速度300ms/stepにおいて分解能150nm(波長の1/100)が確認され,常温かつpassiveな近接場計測において前例のない結果が得られた.
|