本研究は、より軽量な先進複合材航空機構造を実現するためのキーテクノロジーである構造ヘルスモニタリング技術(構造健全性診断技術)の新たな概念として、損傷検知に特化した分散センサデバイスと損傷情報の収集・伝達に特化した光ファイバセンサを階層的に組み合わせた「階層型光センシングネットワーク」を提案した。光ファイバセンサを用いたこれまでのヘルスモニタリング技術の課題点である「補修性」「ロバスト性」「計測領域」を向上させると同時に、複合材特有の微視的内部損傷への感度をさらに向上させることを狙いとした。本研究では、現時点で十分に利用可能なデバイスを階層的に組み合わせた衝撃損傷検知システムを構築し、その有効性を実証することで、階層型光センシングネットワークの利点を明らかにし、より高度なデバイスの開発を含めた将来研究への布石とした。具体的には、Comparative Vacuum Monitoring(CVM)システムに基づいた分散センサデバイスを開発し、分布型光ファイバセンサ技術との融合を図った。損傷の発生によって内圧を変化させる分散センサデバイスをポリマーチューブからなる損傷情報変換機構を介して光ファイバと接続し、分散デバイスが発する損傷シグナルを光ファイバセンサで収集することが可能な階層型システムを実現した。航空機胴体構造を模擬したCFRP補強曲面パネルに対して、合計32個のセンサデバイスを適用し、目視発見が困難な衝撃損傷を感度良く検知可能であることを実証した。さらに従来の非破壊検査技術あるいは構造ヘルスモニタリング技術との比較を行い、階層型システムが優れた補修性とロバスト性を有し、大型構造の全領域をモニタ可能であることを示した。
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