現行の打上げ用ロケットエンジンや、衛星用スラスターにおいて、適切な噴霧燃焼を実現することは、システム成立性の観点から極めて重要である。そのために、推進薬の微粒化に関する基礎的な知見の獲得が強く求められている。本研究では、液体ロケットエンジンにおける極低温推進薬の微粒化過程を対象に、適切な噴射条件を設定するための指針を得ることを目的として、特に、実験計測が極めて困難な噴射器直下流の一次微粒化現象に着目しながら、基礎現象理解と予測手法開発を試みた。 最終実施年度にあたる平成21年度は、極低温流体の状態方程式を考慮可能な数値解析ツールを開発した。大規模数値解析を実施することで、詳細な微粒化過程が明らかになった。並行して、一次微粒化の本質を抽出することで、現象の単純化を意図した液膜微粒化実験を行ない、数値解析結果と比較可能な可視化画像および微粒化特性を取得した。実験と数値解析の双方を実施することで、それらの比較に基づく数値解法の検証を行った。その結果、気液同軸噴射器および衝突型噴射器における、非圧縮流体および極低温推進薬の一次微粒化解析に適応可能性を有する数値解析手法が構築された。この成果は、従来、実施されてきた水流し試験の代替になり得るのみならず、エンジン作動環境下の微粒化特性を把握することにつながり、より適切な噴射条件の選定と噴射器設計法に寄与できるものと期待される。 得られた研究成果は、雑誌(日本機械学会論文集B編76巻765号)に掲載されるとともに、Joint Propulsion Conferenceをはじめ、国内外の8会議において、発表された。また、解説記事(日本航空宇宙学会誌第58巻第677号)においても、今後の発展性を期待して、本研究成果を紹介した。加えて、日本液体微粒化学会における発表を含め、2つの招待講演において、その成果と今後の展望について、紹介を行った。
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