研究概要 |
本研究では,膜・ケーブルを主たる構造要素とする宇宙構造物(=ゴサマー構造)において,軽量・高収納率という利点を保ちつつより高機能の構造を実現することを目指し,構造系と制御系の同時設計を行うための基盤技術を確立することを目指した.以下の3点において成果を上げた. (1)ゴサマー構造の動力学に関する減圧環境中での実験手法の開発:張力によって剛性を持つ膜面の振動応答を,宇宙空間に近い減圧環境下で計測するための加振方法・計測方法を検討・開発した.15cm程度の小型膜を用いて約1/100気圧での計測はすでに実施し,この知見をもとに2010年度初頭には40cm正方膜を用いて1/10000気圧の高真空環境下で振動計測を実施する予定である. (2)数値解析技術の向上:宇宙空間での宇宙構造の動的挙動をできるだけ正確に予測するために,膜の曲げ剛性を考慮しつつ展開挙動が解析できる新たな構造要素を,幾何学的非線形有限要素法の枠組みの中で開発した.この要素を用いることで,姿勢制御系と構造系の連成をより正確に解析することを可能にした. (3)ソーラーセイル膜展開時の姿勢制御系と構造系の連成解析と設計改善:ケーブル・集中質量からなる単純な解析モデルを用いて,宇宙機が大型膜を展開する時の姿勢制御則について検討を行った.その結果,姿勢制御則を変更するだけではなく,構造設計を適切に行うことが特に重要であることをパラメータ解析によって明らかにし,非線形挙動を考慮した動解析に基づく宇宙機の構造・制御系同時設計の一例を示した. 特に(2)~(3)においては,衛星の実設計に対しても適用できる研究成果をもたらした.(1)については今後の実験の準備を行うことができたので,2010年度に成果を見込んでいる.
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