急速なユビキタス社会の到来は、いよいよフラッシュメモリの動作特性にさえ限界を突きつけており、低電力・高速・大容量・高書換耐性の新規ユニバーサルメモリが要望されている。酸化物を所定の金属で挟み込んだキャパシタ構造をとる抵抗変化型不揮発性メモリ(ReRAM)は、次世代不揮発性メモリの中でも単純な構造や高いオンオフ比による多値化の実現など、極めて優れたポテンシャルを秘めている。しかし、電圧印加による抵抗スイッチング機構の定量的かつ統一的なモデルが存在ず、この現状がReRAMの実用化への大きな障害となっている。 本研究は、二元系酸化物半導体である酸化ニッケル薄膜を用いたReRAMに関する。電極には下部・上部ともに白金を用い、酸化ニッケル薄膜の堆積は反応性スパッタリング法を用いて行った。本年度は酸化ニッケルの組成に着目して、種々研究を行った。得られた主な成果は以下の通りである。1.通常酸素過剰となる酸化ニッケルを作製し、大気中でゆるやかなアニール(温度300度)を行うことで抵抗スイッチング効果が発現することがわかった。このアニールで見られる酸素組成の微増がフォーミング前後における導電パスの経路に本質的な変化をもたらしていることが示唆された。2.酸素組成1.05-1.20(p型半導体)の酸化ニッケル中の欠陥準位の定量評価にアドミッタンス法を用いた。酸素組成が1.10以上では欠陥準位の価電子帯からの深さが100meV以下であり抵抗スイッチング効果が見られないが、酸素組成1.07以下では100meV以上の位置に単一の欠陥準位が存在し、抵抗スイッチング効果を示すことがわかった。抵抗スイッチング効果の発現には、欠陥準位の深さやその密度、正孔の放出時定数に一定の条件が存在することを見出した。
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