研究概要 |
Ru-Mn-Si三元系において組成とともに副格子構造の周期が連続的に変化する特異な結晶構造を有するチムニーラダー化合物相の相平衡状態を調べた.またチムニーラダー相の一方向凝固材の熱電変換特性を,Mn添加量および温度の関数として調べた.その結果,Ruセスキシリサイド(Ru_2Si_3)中のRuをMnで置換すると,二元系では高温でしか安定でないチムニーラダー構造が低温でも安定して存在し,価電子数濃度VEC(Valence Electron Concentration)を14に保つように,Ru_2Si_3とMn_4Si_7を結ぶ広い固溶領域Ru_<1-x>Mn_xSi_y(0.14〓x〓0.97,1.584〓y〓1.741)を形成することがわかった.透過電子顕微鏡による結晶構造解析により,実際のチムニーラダー化合物相の組成はVEC=14を満たす組成から僅かにずれており,VECだけではなく原子充填率をある一定範囲内に保つことによってチムニーラダー構造が安定化されていることが明らかとなった.得られた相平衡状態図より,単相チムニーラダー化合物が得られると予測される組成において帯域溶融法による一方向凝固を行った.VEC=14を満たす組成からSi-rich側にずれた低Mn組成材(x<0.60)はn型,Si-poor側にずれた高Mn組成材(x>0.60)ではp型伝導を示す.p型伝導を示す一方向凝固材のパワーファクターおよび無次元性能指数は,Mn濃度の増加とともに増加し,x=0.9において無次元性能指数は0.76(874K)を示した.
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