研究概要 |
Mn-Ru-Si系チムニーラダー化合物に特異的に発現する異相界面の原子構造解析および界面密度と熱電変換特性との相関を調べることを目的とした.Mn_4Si_7-Ru_2Si_3擬二元系において,組成とともにSi副格子周期が連続的に変化するチムニーラダー化合物相が広い固溶領域にわたって存在することを走査および透過電子顕微鏡(TEM)観察により確認した.また,一方向凝固を行うと,組成の異なる多数のチムニーラダー相が凝固方向に伸張した組織が得られた.電子後方反射回折およびエネルギー分散分光法を用いた組成マッピングにより,組成が異なる多数のチムニーラダー相は,金属副格子に関して結晶方位が揃っていることがわかった.また高分解能TEM観察により,組成の異なる界面では,金属副格子の周期に変化はないものの,Si副格子の周期のみが不連続であることがわかった.このような異相界面では,電気伝導を担うと考えられる金属副格子が整合であるため電気特性は変化しない一方,Si副格子の周期変調によってフォノン散乱が促進され格子熱伝導率が低下すると考えられる.一方向凝固材を1100℃において種々の時間焼鈍を行った結果,凝固方向と垂直な方向の異相界面密度が焼鈍時間とともに減少した.その方向に沿って熱電変換特性を測定した結果,電気抵抗率およびゼーベック係数は,焼鈍時間に依存せず変化しなかったのに対して,格子熱伝導率は焼鈍時間の増加,つまり異相界面密度の減少とともに増加し,結果として熱電無次元性能指数は減少した.このことより,Mn-Ru-Si系チムニーラダー化合物に特異的に現れる異相界面を多数導入することにより,熱電変換特性を向上させることができると考えられる.
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