研究概要 |
本研究は,戸建住宅の住宅管理の際の安心感への影響要因を探り、住宅管理の適正化への基礎的知見を得るものである。本年度は、まず、建築学と社会心理学分野における既往研究への文献調査と居住者へのヒアリングによる予備調査の結果をあわせて、建築工事業者(以下、業者)への信頼感とリフォーム工事の際の安心感への影響要因を整理した。そして、その仮説を元に作成したアンケート調査を、新興住宅地と旧集落とが南北に分かれて存在する高松市国分寺町の郊外住宅地の居住者を対象に実施した。旧集落の方が地縁・血縁による人々の結びつきや、かつての「出入りの大工」のような業者とのつきあいが現存すると推察される。その違いやそれに伴う安心感のへの影響要因を探るために同町を調査対象地とした。 その結果、旧集落の方が業者との継続関係を持つ、あるいは、継続関係を望む傾向があることが確認され、統計上も有意であった。また、リフォーム工事の際の安心感の影響要因として、「工事への理解」、「工事を担保する仕組み」、「業者の専門家としての能力」、「業者との付き合いや身近さ」の計4つの因子が抽出された。「工事へ理解」の寄与率が突出して高い。リフォーム工事の際に居住者が安心するためには、居住者が理解に向け自助努力することと共に、事業者の適切な説明・コミュニケーションが大切だといえる。また、居住者の属性別に因子得点の平均値を算出し、クロス集計を行った。その結果、旧集落では「業者との付き合いや身近さ」が、新興住宅地では「工事を担保する仕組み」の影響が強い。旧集落では業者への信頼が、新興住宅地では業者との信頼関係に変わる保証、第三者の関与が、リフォーム工事の際の安心感を生み出すことがわかった。
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