本研究では次世代燃料の物理・化学的特性を活用した内燃機関における新たな燃焼法の構築を目的としている。これを実現するため、平成20年度は本研究者らが既に構築した多成分燃料噴霧モデルを用い、多成分燃料噴霧内における各成分の蒸気濃度分布を調べた。計算では、まず次世代燃料の特性を包含するため、種々の二成分混合燃料に対して実験値と良い一致を得ることを証明した後、混合成分の沸点差が大なるほど、各成分の蒸気濃度が空間的に分離し易いことを明らかにした。さらに、実際の内燃機関における雰囲気場を模擬するとともに、広範囲な燃料噴射時期を想定することで、比較的早期な燃料噴射時期に対して、各成分の蒸気濃度が空間的に分離され易いことを示した。また、これらの結果から、本手法は比較的早期な燃料噴射を伴う超低エミッション燃焼法に有効であることを示唆した。ただし、平成20年度の目的の一つであった着火・燃焼解析は未だ実施しておらず、計算プログラムの改良法を検討するに留まった。したがって、多成分燃料噴霧の蒸気濃度分布特性が、その後の着火・燃焼特性に如何なる影響を及ぼすかは未だ明確化しておらず、今後の課題である。一方、平成21年度に実施予定の実験に用いる噴霧燃焼観察装置に関しては、燃料噴射装置の制御系およびデータ取得のための電子回路が完成するなど、準備が整いつつある。今後、本装置を用いて最適燃焼制御法を模索する予定である。
|