平成20年度において、本研究では多関節構造体に対する共振概念の理論的拡張を実現した。本概念では、多関節構造体のダイナミクスが非線形で多自由度になるにも関わらず、トルク最小を実現する最適制御が関節速度の線形フィードバックの形で達成されることが解析的に導き出された。この性質は、従来の線形系におけると一致しており、共振概念のある種の拡張であることがわかる。この性質を用いることにより、従来のように膨大な数値計算を用いることで最適制御を求めるのではなく、簡単な計算によりトルク最小で周期運動の生成が可能となる。また、本解析は基本的な力学解析でもあり、人間などの多関節構造体の運動を理解するためにも重要な役割を果たす可能性がある。 更に、本研究では本拡張版共振概念に基づいた適応型の制御法を提案した。本制御法の大きな特徴は、制御対象の詳細なパラメータや複雑な数値計算を用いないことである。提案制御則は、これまで我々が提案してきた剛性最適化制御に加え、遅延フィードバック制御を用いることで、関節剛性と運動パターンの同時適応を実現している。これにより、粘性の無いマニピュレータ型ロボットに対しては、トルクを必要としない周期運動を生成できることをシミュレーションにより確認した。また、脚構造ロボットの歩行運動に対しても、拡張版共振状態を実現することが可能となり、省エネルギー歩行ロボットが実現可能となりつつある。制御系の安定性は、収束点近傍で線形化したダイナミクスに対して行い、運動パターンと関節剛性が同時に最適化されることを確認しつつある。
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