研究概要 |
本研究では,擬似ランダムオブジェクトを用いて性能のよい誤り訂正符号を構成することが目的である.ランダムに構成した符号は高い確率で性能がよいが,現実的な計算時間内にそれを求めることは難しい.そこで,現実的に構成可能な擬似ランダムオブジェクトを利用して,現実的な計算時間内に性能のよい符号を構成することは重要である.平成20年度は,その目的のため,擬似ランダムオブジェクトについて調査を行った.エキスパンダグラフを用いた符号の構成に関する研究はいくつか存在しているため,それを手がかりとして擬似ランダムオブジェクトについて調査した.その結果,エキスパンダグラフと擬似乱数生成器,乱数抽出器,困難性増幅器,リスト復号可能符号は,非常に密接な関係があることがわかった.これは,これらの擬似ランダムオブジェクトが本質的に似た性質をもつことを意味する.エキスパンダグラフを用いて定義した符号が漸近的によい符号となることが知られているため,その構成をもとに,他の擬似ランダムオブジェクトを利用することで,新たな性能のよい符号の構成法が提案できる可能性が出てきた.さらに,擬似乱数生成器の中でも,特に,低次数多項式に対する擬似乱数生成器は,直接的に性能のよい符号と関係することがわかった.定数次数の多項式に対する擬似乱数生成器の存在は,性能のよい符号の存在を意味する.次数が定数を超える場合に,同様の関係が成り立つかどうかは明らかではない.
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