研究概要 |
本年度はまず,脳波を用いた睡眠状態指標の開発を行なった.これは脳波生成モデルとして線形状態方程式を仮定したうえで,部分空間同定法と呼ばれる新たなシステム同定手法を用いて,脳波の特徴を抽出し指標化するものである.主にインターネット上で自由に取得できる睡眠時の脳波データを対象として,睡眠ステージ推定のための指標を算出するアルゴリズムを開発し,先行研究で提案されたパワースペクトルに対してファジィ推論やニューラルネットを用いる方法と同程度の精度がある事を示した.また,別種の生体信号を活用することで,推定精度のさらなる向上が期待されることが示唆された. 本年度にはさらに,多種類の生体信号を同時に測定して記録する携行型装置を試作した.まず,脳波,心電図,筋電図,身体活動による加速度および周辺環境の温度や照度,音圧のそれぞれを測定するセンサを選定した.そして各センサからの信号を同時に測定して記録する装置を試作した.この装置は軽量な汎用充電池で駆動され,A/D変換器を備えるワンチップマイコンにより,汎用のメモリカードに測定値を記録するものである.装置の動作の安定性が未だ十分では無いため,今後改良を加えてゆく. これらに加え予備的な実験として,市販のホルター心電計を用いた日常生活下の心電図と加速度の測定を実施した.そして得られた心電図について,従来からある心拍変動解析手法を適用し,睡眠や身体活動との関連を解析した.また予備実験の知見から,開発装置による多種生体信号の同時測定を適切に行なうためのプロトコルを準備した.
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