研究概要 |
本研究では,日常生活下の生体信号を測定して睡眠覚醒リズムを同定するシステムの基礎要素を開発した.具体的には,超小型の生体信号測定装置を新たに製作し,被験者の活動推定のための生体信号解析手法を検討した. 本年度はまず,生体信号測定装置の改良に取り組み,脳波と心電図,加速度および周辺温度を連続して28時間程度記録できる超小型装置を実現した.この装置は単4型充電池3本で駆動し,A/D変換器を備えたワンチップマイコンにより,汎用のメモリカードに測定結果を記録蓄積してゆくものである.装置本体は充電池と記録媒体を含めて,大きさが45mm×25mm×65mm,重量が76gであり,24時間を超えて脳波と心電図を高精度に記録できる装置としては,他に類を見ないサイズを達成できた. 続いて,改良装置による測定を3例実施した.これらの測定では,脳波用電極が周囲に与える違和感や衛生上の問題により測定継続が困難となり,測定期間はいずれも1日程度となった.ここで得られた測定結果について,被験者自身による活動記録と比較した結果,(1)脳波スペクトルや心拍数により睡眠と覚醒を弁別できること,(2)加速度の絶対値により身体活動を推定できること,(3)脳波電極から得られる咀嚼時筋電により食事時刻を推定できること,などが示唆された.より長期間の生体信号測定が可能となれば,これらの信号解析法を用いて被験者の睡眠覚醒リズムを同定でき,日中眠気の強度や日中眠気を出現させない夜間睡眠時間の予測が可能になり,生活の乱れや睡眠障害に起因する能率低下や事故の防止に寄与できるものと考えられる.
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