産業廃水処理技術の一つである創・省エネルギー型嫌気性処理法の代表とも言えるUASB法は、酸生成菌とメタン生成菌の連携により、有機物からメタンエネルギーを回収が可能である。しかし、酸性廃水に対しては、アルカリ剤を添加し、メタン生成菌の至適pHである6.5~8.2に調整する必要がある。このアルカリ剤にかかるランニングコストは回収されるメタンエネルギーよりも大きく、アルカリ剤の削減は、非常に重要な課題である。 本研究の全体構想は、産業廃水処理技術の一つである創・省エネルギー型嫌気性処理法の代表とも言える37℃付近で運転する中温UASB法を用いた。原水にはpH4の酸性廃水である焼酎蒸留粕廃水を用い、メタン発酵する際にアルカリ剤が不必要な運転方法を確立することを目的として実験を行った。ラボスケールUASB反応器により、UASB反応器の高さ方向に廃水供給口を複数個設け、分散供給することにより、酸生成とメタン生成のバランスを取り、アルカリ剤無添加運転を確立することを目標とした。本研究では、酸性廃水に芋焼酎蒸留廃水と麦焼酎蒸留廃水を用い、メタン生成菌の至適pHの範囲であるpH6.5に上昇させるために必要なアルカリ度は単位COD当たり(1kgCOD)0.08~0.12kgCaCO_3が必要であった。各廃水をメタン発酵することにより、除去COD当たり約0.1~0.2kgCaCO_3のアルカリ度が生成されることが分かり、多点分散供給を行うことにより、原水に添加するアルカリ剤を削減可能なことが分かった。また、あらかじめ固液分離された芋焼酎蒸留廃水を原水に用いて、アルカリ剤削減運転を実施した。
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