酸化物分散強化型(ODS)鋼は、その優れた高温強度特性から、高速増殖炉炉心材料や核融合炉構造材料として有望視されている。このODS鋼の実用化に際して、安定した材料特性を得ることが課題となっており、微細組織と強度特性との関係の定量的な理解が重要となっている。とりわけ9Cr-ODS鋼においては残留α相とα'相との2相化により、優れた高温強度特性を持つことがこれまでの研究により明らかとなっている。本研究では、透過電子顕微鏡による観察とレーザー補助3次元アトムプローブによる分析法を併用した実験評価により、ODS鋼の高温強度特性に対して重要な因子であるナノメートルサイズの酸化物分散粒子の分散状況の構造評価を行い、ODS鋼の強化機構を微細組織の観点から定量的に解明することを目的とした。この結果、各相とも酸化物粒子のサイズは約3nm以下と同程度であったが、数密度はδ相の方がα'相よりも4倍ほど多く、これらの結果は機械特性試験の結果ともよく一致するものであった。このことから、9Cr-ODS鋼の優れた高温強度特性はδ相における酸化物粒子の高密度分散が寄与していることが、本研究におけるナノスケールの微細構造解析から明確に示された。
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