エレクトロニクス分野における超短パルスレーザープロセスの応用として、基板上または材料内部に様々な機能性物質を形成させる試みや、それらの機能性物質を微細且つ複雑に加工可能な技術の開発が注目されている。本研究では、対象物質を磁性体材料に絞り、ガラスなどの非磁性材料内部、或いは表面にフェムト秒レーザーを集光照射することで強磁性体の析出を誘起させることを試みた。この手法が確立すれば、近年研究が活発に行われているスピントロニクスの分野においてマイクロ磁気デバイス作製を容易に行うことのできる重要な技術となり得る。本年度は、一般的なソーダライムガラスに磁性イオンを段階的にドープしたガラス試料を作製し、レーザー照射による強磁性相誘起を試みた。基本波長に設定したフェムト秒レーザーを対物レンズを用いて集光照射したところ、室温における磁化の優位な増加が観測された。 また、超短パルスレーザープロセス技術を用いた半導体材料の微細加工に関する研究に取り組んだ。現在、青色または紫外領域における発光デバイスに応用されている窒化ガリウムに対して、低コストかつ高効率な新しいプロセス技術の開発が望まれている。従来の手法とは異なる加工技術として、化学溶液支援フェムト秒レーザーアブレーション法を提案した。本手法では、フェムト秒レーザーの局所的な加熱現象が引き起こすアブレーション反応を酸溶液中において行うことで、周辺部分における改質領域、および反応時に生成するアブレーションデブリの効率的な除去により、高品質な加工が達成される。シングルパルスを用いることで最小加工痕径200nm以下の加工が可能となった。また、微小な加工痕を半導体発光デバイス表面に周期的に配置した光取り出し効率を向上させる機能をもつフォトニック結晶の試作を行った。
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