研究概要 |
本研究は,アルカリシリカ反応(ASR)による損傷を受けた鉄筋コンクリート部材の静的・動的な力学挙動を解明し,さらに性能評価のための損傷パラメータDamage Indexの開発を目的としたものである。 本年度は,損傷度パラメータDamage Indexの開発と,ASR損傷を受けた鉄筋コンクリート部材の静的挙動の評価およびDamage Indexによる評価を行うことを目的とした。 (1)損傷度パラメータDamage Indexの開発 約8年間海洋環境に暴露した拘束度の異なる鉄筋コンクリートブロックについて各種試験を行った。膨張量は鉄筋による拘束度と良好な相関関係かおる。横拘束鉄筋による膨張拘束効果は小さく,軸方向鉄筋比に大きく依存する傾向を示した。特に,定着の影響が大きいことが明らかになった。コンクリートのひび割れについてフラクタル解析を行ったところ,コンクリートのひび割れのフラクタル次元は軸方向鉄筋比と良好な相関があった。この結果は,内部損傷も同様に鉄筋拘束度に依存していることを示唆した結果である。今後,コンクリート中の微細ひび割れ等についてさらなる検討を行うことで,Damage Indexによる損傷度評価の精度が高まるものと考えられる。 (2)ASR損傷を受けた鉄筋コンクリート部材の静的挙動の評価 ASRにより損傷した鉄筋コンクリート試験体の正負交番載荷試験から,ASR損傷がコンクリート部材の力学挙動に及ぼす影響について検討した。コンクリートの膨張量1.0%程度のASR損傷を受けても,耐荷性能が著しく低下することはなかった。しかしながら,部材の破壊過程や破壊形態,塑性変形性能,ならびにエネルギー吸収性能には,ASR損傷による影響が認められ,コンクリートの損傷度と良好な相関が認められた。コンクリートの力学性能を損傷度パラメータDamage Indexにより評価できる可能性を示した。
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