研究概要 |
本研究では,コンクリート構造物の維持管理や健全性診断に効果的な新たな非破壊評価手法を確立するため,弾性波のうちこれまで使用例の少ないレイリ波成分またはラム波成分の様々な特性に着眼して構造体コンクリートの強度等の品質および構造物の損傷状態を迅速かつ高精度に評価する手法の開発に向けた実験的な検証を行なう.具体的には,レイリ波およびラム波の分散特性(dispersion characteristic),周波数特性やエネルギー分散,振幅低下とコンクリートの損傷との関係を明らかにすることと,これらの関係を併用してコンクリート構造物における異なる損傷,例えば,表面劣化,ひび割れ,空洞など不具合の規模,位置を評価することである.本年度は,研究目的を達成するため実験及びデータ解析を実施し,下記の結果を得られた.(1)発泡スチーロによる模擬した,水平ひび割れを有するコンクリート板供試体を作成し,受信センサの一面設置形式で衝撃弾性波計測を実施して,その得た計測結果を入力データとしてレイリ波の位相速度分布をトモグラフィ解析による計算し,ひび割れの可視化可能性を実験的に検討した.その結果,ひび割れひの存在によってレイリ波の位相速度は低下すると考察できた.また,ひび割れの検出は発振したレイリ波の主要波長に依存すると分かった.さらに,レイリ波の位相速度によるセンサ一面設置トモグラフィの実現可能性が確認できた.(2)コンクリート角柱供試体による凍結融解試験を行い損傷レベルに応じて超音波加振機やシャープペンシル芯の破断によって励起したレイリ波の計測を実施した.その結果,劣化したコンクリートの相対動弾性係数が健全なものより低い,また,表面に伝播するレイリ波の振幅,中心周波数や伝播速度の変化も確認できた
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